2024年2月、パレスホテルにて開催された、国内最大規模のカリフォルニアワイン試飲会、アライブ・テイスティング東京(旧グランド・テイスティング)に参加させて頂きました。中でも当日の私的ベスト・ピノ・ノワールとさせて頂いたワインが今作です。→当日ベスト・カベルネはこちら。→当日ベスト・ジンファンデルはこちら。47年の時を経て…何年ぶりかで表紙と巻頭記事をカリフォルニア・ワインが飾り、「カリ・ピノ特集」が組まれたワイナート99号(2020年夏号)。記事の方向性としては流行りの生産者に触れる…というよりも、名門の今を掘り下げるものでした。ですのでピノ・フェチの皆様であれば、登場するワインやワイナリーは馴染みのある名前ばかりだったと思います…"ある一本のピノを除いては"。特集終盤、まもなく終わりを迎えようか…という頃に目に入ったそのページで、恐らくカリ・ピノにお詳しい方であればあるほど手が止まり、度肝抜かれたのではないでしょうか…。「は?…… RIDGEにピノ・ノワールだって!?」 と。そこに掲載されていたのは、あのジンとカベルネの帝王『リッジ』の手掛けるピノ・ノワールでした。それも、47年ぶりに造られた(詳細後述)。実は業界向けには同年3月に発表されてはいたのですが、こうして一般情報として紙面を飾ったのは初。ワイナート掲載当時は、ワイナリー公式サイトにすら掲載されていなかったワインです。因みに当店では従来より、以下のコラムを掲載しておりました。※余談ですがリッジがピノを造らないのは、ポール・ドレイパー自身が単純にこの品種をあまり好きではないため。栽培責任者のデヴィット・ゲイツも同様に、ピノ・ノワールに興味を持っていません。しかし例えばリッジの自社畑の中心的存在であるモンテベロは、地質学的にはピノ・ノワールにこれ以上無いほど理想的な石灰質土壌を備えており、実際、アシスタント・ワインメーカーのデヴィッド・テートはここにピノを植えたくてしょうがないそうです。が、上記二人の重役が乗り気でないため、言い出せないのだとか(^^;重役二人が「NO」と言いながら生産実現にこぎつけたのは、上述の副醸造家のデヴィッド・テート、そして現COO兼醸造責任者であるエリック・ボーハー(右画像)の熱意によるもの。ただ、栽培責任者のデイヴィッド・ゲイツが折れて栽培を初めたわけではなく、葡萄は買付けにて。モンテベロの自社畑は、土壌的には石灰質でピノ・ノワールに適正があるものの、気候的には「ピノには暖かすぎる」との見解は変わっておらず、ゆえに60キロほど海よりのコラトリス地区から果実を調達したのだとか。その購入先がここ↓ガリ・ヴィンヤード (GaliVineyard)所在はリッジの本拠地、モンテベロの山から南へしばらく下った、サンタ・クルーズ・マウンテンズのAVA境界付近、コラリトス地区。太平洋からわずか10km弱の距離で、より海と霧の影響を強く受けるために涼しく、リッジが言うところの「ピノには暖かすぎる」という課題をクリアしています(モンテ・ベロの気候も十分冷涼なのですが)。オーナーのジョセフ・ガリは、ロス・ガトスの町の小児科医。本来は引退していてもおかしくない歳ですが、週に二日のみ現役で診療を行い、住民に愛されているそうです。診療日以外は畑で過ごし、妻ジャニスとともにシャルドネとピノ・ノワールの栽培に心血を注いでいます。初植樹は2013年で、広さは46エーカーほど。昼夜の寒暖差は摂氏20にもなり、午後に吹く海風のせいで、ブドウの果皮が厚くなり、それが冷涼な気候、大きな寒暖差とあいまって、複雑で深い風味の果実になる…とガリ夫妻は説明しています。土壌は砂岩質の下層土の上に、頁岩質の壌土が表土として乗っています。"実はリッジがピノ造りを行ったのはこれが二度目。"逆に言えば、過去60年の歴史の中ではたった一度だけしか造られていませんでした。それも1971年のこと。ですので、それ以来47年ぶりのリリースとなります。リッジは日本の大塚食品が所有しているワイナリー。大塚リッジの日本代表は、黒川信治氏が務めています。単なる取締役ではなく、リッジのワイン造りにも携わっておられる、日本人醸造家の先駆者の一人です。そんな黒川氏ですら、1971年のリッジ・ピノを見たのは一度きり…リッジのセラーに1本だけ、ボロボロのラベルを纏ったピノを見たそうですが、それ以来外部でも一度も無いそうです。製法も独特。クローンは、ディジョン系の115、777、スワン、カレラなど数種類。区画別に植わるこれらのクローンの果実を、すべて個別に収穫・醸造・熟成させ、その風味の違いを見てブレンドを決定。完全に除梗し、しっかり破砕してから1~3トンの小型タンクでアルコール発酵。ピジャージュはせずルモンタージュのみで抽出。天然酵母で発酵させ、マロラクティック発酵も天然乳酸菌を使用。熟成が実にユニークで、まずはフレンチ・オークの古樽に全て入れ込みますが、最終段階の仕上げで20%のみを抜き出し、フレンチ・オークと、アメリカン・オークの新樽にそれぞれ10%ずつ移して追加熟成を行います。カベルネやジンファンデルならともかく、ピノ・ノワールにアメリカン・オークを使うのは極めて大胆な試みですが、まさにリッジ「ならでは」。ジンやカベルネと異なり、樽熟中の澱引きはなし。シュール・リーで13ヵ月間熟成し、瓶詰め直前に一度だけ澱引き。無濾過で瓶詰め。最終的なアルコール度数は、13.8%。凝縮感はしっかりあるものの、華やかさと優雅さが備わったワインに仕上がっています。試飲しました。【2024.2】アライブ・テイスティング東京にて、ようやく試飲することができ、結果、このピノ・ノワールをわたくしイナムラの当日ベスト・ピノとさせて頂きました。過去の生産は47年前に一度きり。リッジにとっては初めて造るようなものです。それで果たして味わいが話題性を超えるなんてことがあるのだろうか?と懐疑的な思いも秘めての試飲でした。ですがその液体から立ち上がる、主張の強さと上品さを併せ持った、赤い果実の魅惑的かつパワフルな香りに背筋が伸びます。口に含めば、まさにこれ以上の詰まり具合がないだろうほどに、ぎっしりと詰まった核果実の旨味の密度。何度か申し上げていますが、密度は濃度とは違います。濃いのではなく、詰まっているのです。艶のある上質の酸と豊富にあるミネラル、そして細やかなタンニンが溶け込んだ硬質の旨みの塊が舌の一点を強烈に穿ち、ほどけ流れ去る感覚が無いまま喉を通り過ぎています。後に残るのは、舌を包むような感触ではなく、深く強く打たれた後に残る、アザのような旨味の足跡。樽の効いた豊満かつ柔らかな果肉感あるカリ・ピノのスタイルではなく、そこから離れた、凛として造りに一点の緩みも無い、高貴にして骨格や筋肉を連想する剛毅な造り。アメリカン・オークを用いているとは思えぬほどオークの香味は大人しく、重みなきエネルギーを持った、ドライ・スタイル…いえ、ハード・ドライともいうべき超洗練系ピノでした。それはあまりに個性的で、しかしその造りは明らかに極上で、決して押し付けがましくなく軽やかなのに、「これがリッジのピノだ!」との主張が漲っている…昨年今年を通じて私にとってはこの上なく衝撃的なピノ・ノワールでした。このような歴史的ピノの誕生の瞬間に立ち会えたこと、そしてそれをこうしてご紹介をさせて頂けること、心から嬉しく思います。因みにワイナート誌の特集は、次のような一文で〆られておりました。「カベルネやジンで培ってきた伝統的な手法が、ピノにも通用するか?と自問するボーハーの表情は、自信に満ちあふれている。」72本完売! 24本追加いたしました。 | 2024年2月、パレスホテルにて開催された、国内最大規模のカリフォルニアワイン試飲会、アライブ・テイスティング東京(旧グランド・テイスティング)に参加させて頂きました。中でも当日の私的ベスト・ピノ・ノワールとさせて頂いたワインが今作です。→当日ベスト・カベルネはこちら。→当日ベスト・ジンファンデルはこちら。 |
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「は?…… RIDGEにピノ・ノワールだって!?」 と。 | |
2024年2月、パレスホテルにて開催された、国内最大規模のカリフォルニアワイン試飲会、アライブ・テイスティング東京(旧グランド・テイスティング)に参加させて頂きました。中でも当日の私的ベスト・ピノ・ノワールとさせて頂いたワインが今作です。→当日ベスト・カベルネはこちら。→当日ベスト・ジンファンデルはこちら。 |
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